こんにちは。優タウン代表の小沼陽子です。
今回から、「母親たちのStory」と題して、私が見てきた朝Cafeや夜Cafeに参加された母親たちの変化の物語を、少しずつご紹介していきたいと思います。
今、不登校のお子さんを抱えて悩んでいる方に、少しでも希望が届きますように。そんな願いを込めてお伝えします。
⚪︎涙ながらに語ってくれた、ひとりのお母さん
ある日、議員さん主催の「不登校勉強会」に参加した私は、ひとりの母親と出会いました。
その方は、中学生の息子さんが不登校となり、とても辛い様子でした。
「今日は小沼さんが来ると聞いて来ました」
そう言って、涙を流しながら話してくれました。
彼女の息子さんは、小学6年生ごろから不登校になり、無理やり車で送り届けたり、、、という生活が始まったそうです。
中学校の入学式では制服を脱いで脱走してしまったとのこと。それでも、吹奏楽部の練習だけは行く。
だけど、制服は嫌だと言って、ひとりだけジャージ姿で通っていてそれも心配だ、とのこと。
彼女はとても心配していましたが、私はその話を聞いて、
「なんて素晴らしい息子さんなんだろう」
「自分の違和感を曲げずに、生きている」
そう伝えると、彼女は少しだけ安心したような表情を浮かべてくれました。
彼女はフルタイムで働いていて、なかなか朝Cafeには来られないとのこと。
ある日、息子くんがおばあちゃんと一緒に「朝Cafeこどもアート展」に来てくれたことがありました。
そのときも、おばあちゃんがずっと心配の言葉を口にしていたのですが、息子くんは私の顔色をうかがいながら、気を遣っているように見えました。
本当に、優しくて賢い子なんだな、と改めて感じました。
⚪︎「夜にもやってもらえたら」…母の声が夜Cafeを生んだ
次に会ったとき、彼女から「夜の時間帯に、朝Cafeのような会をやってほしい」と相談されました。
「土日は病院とかに行くから忙しいし、平日夜はなかなか出かける気持ちになれない、だから金曜日の夜に開催してほしい」
金曜日の夜!なるほど!という感覚でした。
私もフルタイムで仕事をしていた頃を思い出すと、金曜日の夜が一番心が落ち着いていました。
私は「やろう!」と即答し、すぐに夜Cafeの開催に向けて動き出しました。
場所の候補に挙がったのは、優タウン事務所として使わせてもらっているコワーキングスペースの会議室。
とてもおしゃれなコワーキングスペースで、働く母親たちもきっと気に入ってくれるはず。そう思うと私はワクワクがとまりませんでした。
オーナーに相談すると、快く協力してくださり、無事に「夜Cafe」を始めることができました。
働きながら不登校の子どもを抱える母親が集まる「夜Cafe」は、毎回話がとまりません。同じような悩みを安心して話せる場はとても少ないので、貴重な時間です。
彼女は夜Cafeに、2回、3回と参加してくれました。
そのたびに、少しずつ表情が和らいでいくのを感じました。
私は彼女の話を聞きながら
「大丈夫」「息子さん、本当に素敵だね」と毎回同じようなことを言っていた気がします。心からそう思っていました。
「仕事を辞めようと思っている」
「息子と、もっとゆっくり向き合いたい」
夜Cafeをはじめて数ヶ月ほどすると、彼女からそんな話も出てきました。
⚪︎息子くんの変化、そしてまた始まった仕事
彼女は実際に退職されました。
けれど、母の退職を見計らうかのように息子さんが「学校に行くようになった」ということ。
彼女の変化に伴い、息子さんもどんどん変化していく様子が伝わってきました。
「勉強したいと言って塾にも通い始めた」
「なんだかとても良い点数をとったみたい」
そんな話も聞くようになり、
そのうち、「勉強しすぎて逆に心配です」なんて話もされていました。
なんだかんだと息子さんも忙しくなり、仕事を辞めて家にいても暇なので、結局、彼女はまた仕事を始めることにしたそうです。
⚪︎「支えられる側」から「支える側」へ
あのとき、涙ながらに「どうしていいかわからない」と話していた彼女が、今では、
「他にも苦しんでいるお母さんの力になりたい」と、優タウンの活動を手伝ってくれています。
私の方が、逆に励まされています。
彼女は、怒涛の忙しさの中で、ネットを見る時間もままならず、『優タウン』に辿り着くまでに相当な時間を要したそうです。
「もっと早く小沼さんに出会えていたら・・・」
そう言ってくれるたびに、
優タウンを知ってもらう活動をもっともっと拡げていかなくては、と背中を押されます。
私が彼女に魔法をかけたわけでもなく、彼女が自分で変わっただけです。
似たような経験をした親と話しながら、自分を責める気持ちから少し離れ、息子さんの素晴らしさにも気づき、息子さんとの信頼関係も深まっていったのでしょう。
この物語が、今まさに苦しみの中にいる方の心に、そっと寄り添えますように。
次回の「母親たちのStory」も、どうぞお楽しみに。
小沼陽子(NPO法人 優タウン代表)
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